「WIRED CAFE」など全国約80店舗を展開するカフェ・カンパニーの代表であり、クールジャパン有識者委員や戦略事業クリエイティブディレクターにも名を連ねる楠本修二郎氏。
新刊『おいしい経済』を上梓した楠本氏は、このコロナ禍にあっても飲食業界の未来は明るいと話し、さらに高齢化、人口減少などの問題を抱える日本社会についても「豊かなコミュニティを再構築するチャンス」だという。
彼のビジョンを生み出したカフェビジネスの原点とは。そしてその目が見据える未来とは?
(取材・文/川岸徹、写真:松橋晶子)
ビジネスの原点は米軍キャンプ
――楠本さんはこれまで自身が経営する飲食店を成功に導くだけでなく、地域全体を盛り上げ、カルチャーを作り上げてきました。「コミュニティ」を意識し始めたのはいつのことでしょう。
僕は幼少時代を福岡市の西戸崎地区で過ごしました。当時は米軍基地「キャンプハカタ」があって、よく基地に忍び込んだものです。
軍人が暮らす古い住居が建ち並んでいましたが、老朽化でペンキがはがれ、薄汚い灰色をしている。でも、そこに西日が当たるとピンク色に染まり、何ともいえないいい雰囲気になるんです。今にして思えば、これが人々の暮らす場所、つまりコミュニティを意識するようになった最初の出来事だと思います。