新型コロナウイルスは多くの業界に「変化」を迫った。なかでももっとも強い影響を受けたのが外食産業だった。果たしてどう対応したのか。
WIRED CAFEの運営をはじめとしてカフェ・カルチャーをけん引してきたカフェ・カンパニー代表の楠本修二郎氏と、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などを運営するロイヤルホールディングスの菊地唯夫代表取締役会長に聞く。全3回。
――『おいしい経済』の著者、カフェ・カンパニー株式会社代表取締役社長、楠本修二郎氏とロイヤルホールディングス株式会社代表取締役会長、菊地唯夫氏は早稲田大学政治経済学部の同窓生で旧知の仲。まったく違う道を歩みながら、コロナ渦で共に「食」産業を背負うことになる。2人の展望を聞いてみた。
カフェ・カンパニーとロイヤルホールディングスは業態の作り方も考え方も真逆のアプローチだと思えた2人の対談は、話が進むにつれ、実は同じ「食」の未来を向いていることが浮き彫りなる。
執筆:河西泰、撮影:片桐圭
マスからロングテールの時代へ
――おふたりは大学の同窓だとうかがいました。
楠本:大学の卒業名簿は同じですけど、菊地さんは日本債券信用銀行からドイツ証券を経て、現在に至るエリートコースを歩まれていて、僕の経歴とはまったく真逆です(笑)。お互い、「食」の業界で、その未来への打ち手を考える立場にいるというのは不思議な縁ですね。
菊地:楠本さんと会うと、いつも新しいテーマに取り組まれていてとても刺激になります。今回の本はどういった内容なのですか?
楠本:今回は「おいしい」の歴史を紐解いてみました。
お互い早稲田の政治経済学部の同窓生で、同じ時代を生きてきましたよね。30年前がバブル崩壊、そこから失われた30年と言われていますが、コロナ禍を挟んで2050年には人口が1億人を切ると言われる時代に突入します。
つまり、このあとの30年をどう生きるかで、日本の未来は変わるはずだ、という想いが僕のなかにあるんです。
この本はそんな時代に、「おいしい」という概念で経済を見てみようという提案になります。
菊地:歴史を紐解く作業は重要ですよね。不確実な時代ではあるけれど、日本の人口、世界の人口はほぼシナリオ通りにきています。
「分かっていること」は結構あって、過去を踏まえたうえでそれを見ていくことはすごく重要だと私も思っています。
楠本:さすがに今回のパンデミックを予測するのは難しかったとしても、たとえば少子高齢化などは、かなり前から言われていて、ある程度予想されていたことでしたからね。
菊地:経済曲線は大きくブレることもありますけど、出生率と人口の予測というのは、そんなに予測から外れません。そして、人口曲線をベースに考えていくと、「食」がとても重要になることが見えてくる。その点で、食を軸に経済を紐解こうというのは、非常にロジカルな作業ですね。