最後に、中国経済の状態がある。
習氏がこのところ、「共同富裕」のスローガンを掲げて大きな私企業を締め付けていることから、東京では中国の今後の経済成長を不安視する向きが多い。
「中国人からは今、もっと投資しませんかという誘いを受けている。乗り遅れないようにした方がいいと言われる」
日本のある大手銀行の顧問はこう語る。「だが、中国人がそう言うのは、何らかの問題を抱えてしまっている時だ」
看板政策の「一帯一路」構想を通じた外国でのインフラ整備プロジェクトに対する中国の支援は、ここ数年で劇的に減っている。
海外向け開発金融機関、国際協力銀行の前田匡史総裁は、これは中国経済が国内で「深刻な問題」に直面していることの表れだと主張する。
中国経済の成長が鈍化すれば、日本自身の経済にも激烈な影響が及ぶ。中国は日本にとって最大の輸出先であり、輸出全体の22%を占めている。
日中関係を観察している評論家などは、習氏が台湾や尖閣諸島・釣魚島をめぐる冒険外交でナショナリズム的な情熱をあおり、中国国民の目を景気の悪化からそらそうとするのではないかと恐れている。
台湾侵攻の可能性には慎重
それでも、台湾をめぐる戦争が迫っているとの見方に対して、日本の学者の多くは米国の学者よりも懐疑的な姿勢を取っている、と早稲田大学の青山瑠妙教授は言う。
日本の専門家たちは、習氏が近いうちに台湾本島の本格的な侵攻というリスクの高い行動を取って自分の権力を危険にさらしたりすることはないだろう、と考えている。
ほかの国々と同様に日本でも、軍事や安全保障の専門家は、習氏が台湾を手に入れるために武力を行使する可能性について政治アナリストよりも強い不安を抱きがちだ。
だがそんな彼らも、米国人の専門家に比べれば曖昧な発言をすることが多い。
「いつになるかという予測にはかなりの幅が生じうる」
日本の陸上幕僚長、吉田圭秀氏はそう語る。2021年に米軍司令官が連邦議会で示唆したように、「6年以内とか、そういった確たることを言うのは難しい」
日本ではむしろ、徹底的な侵攻には至らない「グレーゾーン」の活動の方が心配されている。
サイバー攻撃とか、台湾の領海に中国海警が侵入するとか、台湾本島以外の島々での土地の収奪といった行為のことだ。