1995年に米国でオンライン書店として立ち上げられたアマゾンは、数々のイノベーションを起こし、急成長を続け、2020年現在、世界19カ国に拠点を持つ大企業となった。新型コロナウイルスの感染拡大も追い風となり、ネット販売は歯磨き粉一つ買うのにも利用されるほどに、私たちの生活にすっかり浸透している。
急成長と大きな社会変革を両立させたアマゾンの企業理念とは何か。アマゾンを支える社員にはどんなことが求められているのか。『amazonのすごいマネジメント』を上梓した元アマゾン社員で、aLLHANz合同会社共同代表の太田理加氏と小西みさを氏(兼AStory合同会社代表)に話を聞いた。(聞き手:岡崎加奈 シード・プランニング研究員)
※記事の最後に太田理加氏と小西みさを氏の動画インタビューが掲載されていますので、是非ご覧下さい。
──アマゾンでは人材の採用にとても力を入れているということです。そこで求められる優秀な人材とは、必ずしも学歴の高い人やたくさん業績を上げてきた人ではないのでしょうか?
小西みさを氏(以下、小西):アマゾンが必要とする優秀な人とは、リーダーとして行動ができる人です。キラキラな履歴書・経歴書を持って面接に臨んだ人であっても、行動面でリーダーシップが発揮できる要素が足りないと判断されたら採用されません。
優秀な人材の採用にこだわるという点は、1997年にナスダック市場に上場した時に、創業者ジェフ・ベゾス氏がずっと変わらずに大切にしていくと宣言した3つ事項の中の一つでもあります。
候補者の中にアマゾンの採用基準に合う人がいない場合も、その中で一番優れた人を選ぶというようなことはしません。全員に不採用通知を出すこともあります。どんなに人手が欲しい状況であってもです。無理に採用してしまうと、長期的視点でお互いにハッピーになれませんからね。
一方で、面接を受けに来てくださる方は全員、アマゾンの大切なお客様でもあります。合否にかかわらず「いい会社だな」と思ってもらえるように、面接中には志望者のお話を誠意を尽くして聞き、ご質問にお答えします。
一度不採用になっても、別の役職ではそこに必要な強いリーダーシップの要素をもっている人もいますので、再チャレンジしていただきたいです。
ちなみに、アマゾンでは人事の担当者ではない人も採用候補者を提案し、中心となって採用活動を行う制度があります。
採用したいポジションがあるチームのマネジャー(ハイヤリングマネジャー)が中心となり、「バーレーザー」(リーダーシップ理念を秤に、候補者が現在チームにあるバーを上げてくれるような人材であるかどうかを判断する人)やそのポジションに関わる人を含め、5人前後の採用グループを結成します。グループのメンバーがそれぞれ面談を行い、当人がアマゾンでリーダーとして活躍できるかどうかを多角的に評価して見極めます。