一貫しているのは、ストレートな考え方はもちろんのこと、里崎氏が「欲」を理解しているところだ。
現役時代なら野球、引退後なら解説やYouTubeと楽しめそうな物事には貪欲だが、無欲である物事もリアルに伝わってくる。衣服や食べ物への執着は人並み以下であると、自分でも認めているという。
人間とは、意識や自制しなければどうしても欲が溢れてくる生き物だ。里崎氏はそれを、こんな比喩を用いながら伝えている。
“引っ越しを想像してみてください。
家賃、築年数、駅からの距離、間取り、その他の設備……希望を挙げたらきりがありません。自分が住む物件を決めるときには、どこかを妥協していると思います。”
物件を決めたときに「妥協したな」と思うと、なんだか損した気分になりませんか? そんな感覚に襲われてしまうのは、多くを求めすぎているためです。「予算内の家賃ならばほかは我慢できる」と決めれば、築年数は古いかもしれないけど、駅から近く、広い部屋に住めるかもしれない。そう考えたほうが、幸せに暮らせると僕は思うんです
里崎氏は本書を通じて、「シンプルに考えることが成功への最短距離である」と教えてくれている。同時に、人間の欲望に警鐘を鳴らしているような側面も垣間見せる。
読者からすれば、痛いところを突かれる文面と多く出くわすかもしれない。ただ、不思議と読後感がすっきりする一冊である。