Twitterのアカウントを非表示にされたトランプ前大統領(写真:AP/アフロ)

(山本一郎:投資家、作家)

 世の中には、思った以上にヤバいやつがいっぱいいる。ヤバいやつである私が言うんだから間違いない。

 いきなり結論を書いてしまったので、以下駄文。

 何が起きているのかというと、一言で言えば、世界的な大規模「2ちゃんねる」との呼び声も高いTwitterが提供している「Space」という、ユーザーなら誰でも音声生配信が可能というサービスの話です。このプラットフォームを使って、レイシストやイスラム主義組織タリバンの皆さんが、大勢のネット民に向けて熱弁をふるっています。

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Racists and Taliban supporters have flocked to Twitter’s new audio service after executives ignored warnings(https://www.washingtonpost.com/technology/2021/12/10/twitter-turmoil-spaces/)

 我が国でもひろゆきが知識人としてデジタル庁に呼ばれてしまう時代ですから、世界に冠たるTwitterがそのぐらいのことをやらかしてもあながち不思議ではないんですけれども、何がマズいかと言うと、「そういうカルト的で反社会的なことをネットで書いたりしゃべったりすることも民主主義が認めた自由」とするのか、「いくらなんでも、クソみたいな言論を自由があるからといって放置しといたら、影響される馬鹿や実行に移す阿呆が出たりしてさすがにまずいだろ」と制限するのか、という主張が真っ向から議論になっとるわけですよ。

 このような問題はもう30年以上も前から起きていたことなんですよね。

 私が高校生の時に出入りしていたパソコン通信を振り返っても、最初は顔見知り同士が仲良く楽しくチャットしたり、地元の草野球の開催情報などをやり取りしたりして平和でしたが、ある時、会員に「マルチ商法で生計を立て、毎日駅前でチラシを配り、区役所と日々揉めているおじさん」という仕上がった満貫人物が乱入し、パソコン通信のルームは荒れに荒れたという一件がありました。

「何だお前」「お前こそ何だ」と最高に揉めた挙句、管理人であるシスオペ氏(システムオペレーター)が権限を行使してつまみ出したところ、そのシスオペ氏の自宅に満貫おじさんが突撃。白昼真っ只中の襲撃が発生し、「警察を呼べ」「取り押さえろ」と怒号が響き渡ったのであります。私ら近所住民一同も騒ぎを聞きつけて手に手に金属バットなど持参し、実力排除したのもいまとなってはいい思い出です。あの時ほど、野球をやっていてよかったなと思ったことはありませんでした。

 その後、満貫おじさんとも和解し、近隣住民が総出で一丸となり問題解決できたのは素晴らしい経験でした。ただ、顔役の人が満貫おじさんの話を聞くうちに、人生が転落していくさま、そして自分の力ではどうにもならない状況が分かり、「生きていくのは大変だ。確率が悪ければ、私も含め、誰であれ思っても見ないむごい時間を送ることになりかねない」と考えたものです。

 まさか、私自身が「山本太郎」という見ず知らずの人に間違われ、たくさんの抗議を頂戴するむごい人生を送ることになるとは、高校生当時は思ってもみませんでした。

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