韓国・ソウルで、北朝鮮のミサイル発射実験を伝えるニュースを見る人々(2021年9月28日、写真:AP/アフロ)

 相手国のミサイル発射基地などを自衛隊がミサイルやロケットで攻撃する「敵基地攻撃能力」の保有をめぐり、政府内で議論が高まっている。背景には、北朝鮮や中国、ロシアなどの日本を狙うミサイルの技術が大幅に向上し、従来のミサイル防衛システムでは対処できないようになってきた状況がある。元陸上幕僚長の岩田清文氏に、自衛隊が敵基地攻撃能力を保有する必要性の有無と課題について語っていただいた。(後編/全2回)

(吉田 典史:ジャーナリスト)

◎前編「『極超音速兵器』登場で状況は一変、不可欠になった敵地攻撃能力」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67877

実行には米軍との一体化が必要

──自衛隊が敵基地攻撃能力を保有したとしても、「北朝鮮や中国のミサイルは移動式であるため、発射する場所を把握できない場合がある」と言われています。

岩田清文氏(以降、敬称略) 発射寸前のミサイル本体やその発射台を正確に攻撃するのは、確かに難しいと思います。

 敵基地攻撃行う場合は、まず軍事衛星を使い、敵ミサイルの位置を探知することが重要です。軍事衛星の中には、偵察衛星や早期警戒衛星などがあります。偵察衛星は、地表の画像を光学や電波によって撮影します。光学衛星には光学カメラが搭載されているのですが、夜間や雲が多い時には正確に撮影ができません。合成開口レーダー(SAR:電波で地表を照射し反射波から画像を作成する)を搭載したレーダー衛星ならば、昼夜問わず雲があっても見えるのですが、事前にミサイルの位置をある程度把握していないと見つけにくい。