深圳の夜景(写真:REX/アフロ)

(植田統:弁護士、名古屋商科大学経営大学院教授)

 日本の将来はお先真っ暗だ。人口は減る、国内総生産(GDP)は成長しない、国内市場は縮小する、財政赤字は膨らみ続ける、給与は上がらない。その一方で、デフレが続いたおかげで物の値段は安く、国民の生活は安定している。

 でも、それは「今のところは」という但し書き付きの状態だ。なにせ財政は破綻しかかり、それに対して政治家は何のアクションも起こそうとしないどころか、さらに財政を悪化させようとしているからだ。

 そんな状況を見て、海外のグローバル企業は日本を見捨て始めた。日本企業も生産拠点を海外に移転し、日本で稼いだ巨額の資金を海外企業の買収に投資し始めた。

 個人レベルでも、優秀な人材は日本企業を見捨て外資系に転職し、若くてアグレッシブな起業家はシリコンバレーや深圳に活路を求め、資産家は海外株への投資を本格化させ始めた。

 こうした現実を直視し、それを止める魅力的な方策を今のうちに打ち出さないと、日本国自体が空洞化し見捨てられていく。それなのに、岸田総理にとてもその覚悟があるとは思えない。

およそ30年前の深圳の風景(写真:Ian Berry/Magnum Photos/アフロ)

日本を脱出する日本企業と日本を見捨てる海外企業

 日本企業の中で、海外に脱出しやすいのは製造業だ。生産能力を海外に移転し、その市場での地産地消をめざしている。

 国内全法人ベースの海外生産比率(海外の現地法人の売上高を海外に出ていない企業を含めた国内の売上高と現地法人売上高の合計で割ったもの)は、2010年度には18.1%であったものが、2018年度には25.1%へと伸びた。

 海外進出企業ベースの海外生産比率(海外の現地法人の売上高を海外進出している企業の国内売上高と現地法人売上高の合計で割ったもの)はさらに大きく、2010年度に31.9%であったものが、2018年度には38.2%だ。最も海外生産が進んでいる輸送機械では、国内全法人ベースの海外生産比率が46.9%にも達しているのである。

 日本企業の海外M&Aについては、2010年に300億ドル(約3兆円)だったが、2018年には1680億ドル(約17兆円)にまで伸びている。ちなみに、日本企業の設備投資金額は49兆円だから、いかに大きな金額が海外M&Aにつぎ込まれているかがわかる。

 これに対し、日本企業同士のM&Aは900億ドル(約9兆円)程度、海外企業による日本企業のM&Aは100億ドル(約1兆円)にも満たない。日本企業の多くが、海外市場に活路を求め、海外企業は日本市場を見捨てている。