「首都機能移転」という切り口も

 そして実はもう一つ、岸田政権が打ち出せる、「新しい資本主義」の名に恥じない大きな切り口が存在しています。それは新しい産業政策を強力に推し進めるプロジェクトにもなり得ます。「首都機能移転」です。

 首都機能移転に乗り出せば、経済活性・景気浮揚という効果が必ず期待できます。のみならず地域活性・地方創生、リスク分散・災害対策といった日本が抱える重要課題を一気に解決に向かわせることになります。

 またかつて平城京から平安京へと遷都をしたのが代表的ですが、遷都には、人心を一新し、政治を正すという目的がありました。現代ならば「首都機能移転」で、人心一新と経済活性化が期待できるでしょう。その決断を岸田政権ですべきなのではないでしょうか。

 といっても平安京への遷都のように都をごっそり別の地に移すというのは現実的ではありません。やはり以前にJBpressで述べたように、まずは環境省を栃木の那須高原に移転させるような首都機能の一部移転をし、次々に他の役所も分散的に移転させていくのがよいと思います。

(参考)「コロナ危機に大胆な経済対策を!新・首都機能移転論」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59902

 リニアが開通すれば東京と大阪も約1時間で結ばれるようになりますから、そうなれば大阪まで含めて「首都」と考えるようなことも可能です。各省の各地への移転を進めながら、最終的には、関東から関西までのメガリージョンを全て首都としてしまう、いわゆる「拡都」というアプローチを掲げるのも一手でしょう。冒頭に書いた黄金の3年間にも重なる2025年には、大阪で万博も開かれます。ともすると盛り上がりに欠けてしまう万博への注目を集めるためにも、タイミング的にも相応しいと考えます。

 岸田首相が「新しい資本主義」を掲げたのは、これまでの経済政策の継続では日本の将来になかなか明るい材料が見いだせないという認識があったのではないかと思います。ただその言葉は、ともすれば具体策に乏しい、ポエティックなものに終わってしまう危険性があります。国民の何となくの期待が失望に変わる時、却って「大げさなことを言わなければ良かったのに」ともなりかねません。

 本格政権になる道筋が見えている岸田政権には、ここに挙げたようなインパクトのある政策・夢のある構想を具体的に打ち出し、若い世代が希望を持てる時代をつくることを期待したいと思います。