フィリピンのドゥテルテ大統領と会談した米国のレックス・ティラーソン元国務長官(2017年8月7日、写真:ロイター/アフロ)

「フィリピンが対中政策のカギになり得る」

 米国のある研究者と話をしている時にでてきた発言である。東アジアの安全保障状況はいま、米中という対立軸の中で緊迫度が高まっている。

 中国が虎視眈眈と狙いを定める台湾をはじめ、拡張主義的な動きは東アジアだけでなく、東南アジア諸国にも及んでいる。

 その中でフィリピンの存在は大きいと同研究者は述べる。

 歴史を振り返ると、1980年代に米国のロナルド・レーガン大統領はフェルディナンド・マルコス大統領をうまく利用していた。

 冷戦時代、共産主義勢力の世界的な拡大に対抗するため、米国はマルコス大統領が独裁者であることを十分に認識していながら支援し続けた。

 フィリピンが共産国になるくらいなら、米国との関係を維持できる独裁国のままでいいという判断である。

 レーガン大統領の前任ジミー・カーター大統領でさえマルコス政権を支持していたという。

 現在のロドリゴ・ドゥテルテ比大統領は、国際法を軽視し、超法規的な殺人を擁護するなど、マルコス氏と大差ない言動をする人物だ。