(福島 香織:ジャーナリスト)
11月16日の米中首脳オンライン会談に対する評価は、メディアごと、あるいはチャイナウォッチャーごとにかなり分かれたのではないだろうか。米中関係が一時的に緩和に向かうシグナルが発せられたという見方もあれば、台湾問題をめぐる相手の出方を探るジャブを交わしたという見方もあり、また両国の台湾をめぐる対立の厳しさを浮き彫りにしたという見方もあった。しかし、どのような受け取り方であっても共通しているのは、米中関係の対立構造が大きく変わることはない、ということだった。
大きな打開の機運がないにもかかわらず、バイデンと習近平は3時間以上も話し合った。休憩はわずか15分の1回だけで、会談は予定された時間を大幅に超えたという。日中の首脳会談で、こんなに話し込んだことがあっただろうか。
バイデンが大統領になってから習近平と話すのはこれまで電話会談が2回あっただけで、顔を合わせたのは初めて。オンラインではあるが双方の表情を見ながらのこの会談は、米中関係にどのような影響を与えるのだろうか。
穏やかな空気で対話がスタート
まず会談のポイントを整理しよう。
一部メディアが報道した会談の冒頭の様子を見ると、バイデンも習近平も実ににこやかで、穏やかな空気で対話が始まった。バイデンから穏やかに「主席先生、あえて嬉しいよ。次は以前のように、中国を訪れて直接フェイストゥーフェイスで会いたいね」と呼び掛け、5分ほどの挨拶を行った。
バイデンの挨拶のポイントは「競争を衝突に変えないようにしたい」ということだ。そのために「常識的なガードレールを作ること」「立場の違いを率直に公開すること」「気候変動などグローバルな問題で共同の利益を求めて協力すること」などを挙げた。そして米中の問題は、両国間だけでなく世界に影響があり、我々は世界に対して責任がある、と訴えた。