(英エコノミスト誌 2021年11月6日号)

現在を支配する者が過去を支配する。
中国共産党の指導者としての3期目(1期5年)の続投に備え、習近平国家主席が政治、ビジネス、社会のルールの改定にいそしんでいる。
自身が権力を握り続けるうえで必要不可欠だと考える別のプロジェクトにも取り組んでいる。党そのものの歴史を書き換えることだ。
自分はなくてはならない存在であり、毛沢東、鄧小平に並ぶ政界の巨人で、2人の先達の遺産を礎に中国を世界の大国に変身させている指導者だということを国中に知らしめたいと思っている。
100年間で過去に2度しかない歴史決議の重み
北京では11月8日から4日間の日程で、政治・軍事のエリート約370人が年に1度開催する共産党中央委員会全体会議が開かれている(編集部注:今期6度目の開催になるため「6中全会」と略される)。
議案として公表されているのは、党の歴史に関する決議案だけだ。
採択されれば、党の創建から100年間で3度目の歴史決議となる。
1回目は1945年、2回目は1981年に行われたもので、前者は毛沢東にとって、そして後者は鄧小平にとっての勝利となり、決議によって重大な局面で権力基盤を強化した。
習氏も歴史決議を行えるということは、2022年秋に開催予定の共産党大会で自らの支配の継続を決めることに対する目立った反対意見をすべて抑え込んだことを示唆している。
米ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のジュード・ブランシェット氏によれば、この決議は「並外れた権力示威」になる。
今回の6中全会は、5年に1度の党大会の前に行われる最後から2番目の中央委員会全体会議であり、党大会の流れを決めるうえで重要な会議だ。
来年の党大会で、習氏は総書記就任10年を迎える。
党の慣例に従うのであれば、習氏はこの大会で定年となり、政界を引退する。だが、今回は続投することがほぼ確実だ。