JAL特別機で東京・羽田空港に帰国した小野田寛郎氏(1974年3月12日、写真:Gamma Rapho/アフロ)

(山根 一眞:ノンフィクション作家)

 終戦を知らず命令解除を受ける機会がなかったため、南シナ海にあるフィリピン、ルバング島の密林で、29年間軍事行動を続けた陸軍少尉、小野田寛郎(おのだ・ひろお)さん(1922~2014年)。1972(昭和49)年3月12日、JAL特別機で羽田空港に帰国を果たしてからほぼ半世紀になる今秋、フランスのアルチュール・アラリ監督による映画『ONODA 一万夜を越えて』が公開された。

 2時間54分という大作にもかかわらず、若い時代の小野田を演じた遠藤雄弥さん、壮年期後を演じた津田寛治さん、救出に貢献した鈴木紀夫役の仲野太賀さんらの演技は秀逸で、飽きることなく観ることができた。実際の小野田さんが演じているのかと思わせる津田寛治さんの演技、メイクは感嘆に値する。『ONODA』はこの数年観た映画の中では、群を抜く名画だった。

映画『ONODA』のワンシーン。津田寛治さんが演じる小野田さん。YouTube「映画『ONODA 一万夜を越えて』予告編」よりキャプチャ

 もっとも『ONODA』が描く「ONODA」は、実際の「小野田寛郎」とはだいぶ違っていた。この映画を観た若い世代がSNSなどで、「小野田寛郎さんのことは知らなかったがよくわかった」といった感想が多く見られたが、この映画は歴史的な事実や人物像を忠実に再現したドキュメンタリー映画ではなく、創作された劇映画だ。この映画で「小野田寛郎」に関心を持ったなら、ぜひ「小野田寛郎」の実像を知ってほしいと思う。

 と、言うのも、私は小野田さんと不思議な縁で再会し、8時間におよぶ対談を行い、その実像に触れていたからだ。