世界を変えた第二次産業革命、遅れていた明治日本

 イギリスで起こった産業革命は、科学的研究の成果ではなく個人的経験に基づく発明をきっかけに綿製品を効率的に製造できるようになることで達成されました。発明されたのは飛杼(とびひ)や水力を利用した紡績機などです。これらを生み出したのは、必ずしも大学を卒業した専門家ではありませんでした。

 それに対し、19世紀末にドイツやアメリカで始まった重化学工業を中心とする第二次産業革命においては、より科学的な手法が導入されました。第二次産業革命が起こったドイツでは、求められる労働者の質が一変し、工科大学で高等教育を受けた労働者の需要が増加したのです。

 このように第一次産業革命と第二次産業革命の中身を比べると、両者は全く異質のもので、真に「世界を変えた」と言えるのは第二次産業革命の方でした。もう少し詳しく述べてみましょう。

 繊維工業を例にとるなら、第一次産業革命では、繊維生産物が羊毛を原料とした毛織物から綿を原料とした綿織物に変わり、第二次産業革命では綿織物から化学技術によって製造する繊維を原料とした化学繊維に変わりました。

 ここで注目してほしいのは、動物繊維や植物繊維といった天然繊維と合成繊維の大きな差異です。動物繊維を1ポンド製造しようとすれば、同じ重量の植物繊維を生産するのに必要なエネルギーをはるかに上回るエネルギーが必要となります。例えば羊毛は、同じ量の繊維を生産するために、綿よりもおよそ12倍の土地を必要としました。

 ヨーロッパは、増加する人口に十分な衣服を供給するために、より低コストな産業へと転換することが必要だったのです。イギリス産業革命で綿織物が基軸となった大きな理由は、ここに求められます。