(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
政府は10月22日、「再生可能エネルギーを最優先に最大限導入する」方針を掲げた新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。
計画では2030年度の電源に占める再生可能エネルギーの比率を2019年度実績の18%から36~38%にまで引き上げる。これまでの計画では2030年度の再生可能エネルギーの比率は22~24%となっていた。36~38%の内訳は、太陽光発電が14~16%、風力5%、水力11%となっており、太陽光を中心に倍増させる野心的な内容だ。
2030年度の再生可能エネルギーの比率は当初、30%前後と見込まれていた。だが7月に「2030年度に温暖化ガスの排出量を2013年度に比べて46%減少させる」目標を取りまとめたことから、その比率を上げざるを得なかった経緯がある。
一方で、実現可能性について疑問の声が早くも上がっている。気になるのは、「世界人口の85%が既に気候変動の影響下にある」との研究結果があるなど、気候変動が世界で頻発する状況になっていることだ。再生可能エネルギーは気候変動の影響を受けやすい。気候変動が最近の天然ガス価格高騰の一因となったことからも、「再生可能エネルギーに偏った電源構成は安定供給の面で問題が大きい」との批判が出てきている(10月25日付日本経済新聞)。