2018年8月8日、国家警察の記念行事に参加したデゥテルテ大統領(右)。左は当時の国家警察長官のオスカー・アルバイアルデ将軍(写真:AP/アフロ)

 2022年5月に次期大統領選挙を迎えるフィリピンでは、副大統領に立候補するドゥテルテ大統領も含め、正副大統領の出馬への動きが10月1日の立候補届け出を控えて本格化している。

 こうした中、オランダ・ハーグにある「国際刑事裁判所(ICC)」が、ドゥテルテ政権で進められた麻薬関連犯罪の捜査手法が「人道に反する罪」の可能性があるとして、このほど本格的な捜査着手を決めた。

 人権団体などからの報告に基づき麻薬犯罪の捜査現場で警察官らが司法手続きによらずに容疑者を射殺するなどのいわゆる「超法規的殺人」の違法性にICCは早くから注目し、予備的調査に着手したものの、ドゥテルテ大統領はこれを不満とし、フィリピンはICCを脱退している。

 しかしICCでは「フィリピンが加盟国であった時期の犯罪容疑には捜査権がある」と主張して今回本格的な調査に乗り出すことを決めたのだった。

 ドゥテルテ大統領側は「捜査協力拒否」を強く打ち出しているが、次期大統領選とも関係して、今後ICC側との捜査を巡る駆け引きが複雑化しそうな気配だ。

現職大統領が、是が非でも副大統領候補の指名を受けたかった事情

 フィリピンでは憲法の規定で大統領は「1期6年の任期」と決められている。このためドゥテルテ大統領は2022年の大統領選に大統領候補として出馬することは禁じられている。

 ところが9月8日、ドゥテルテ大統領自身が名誉総裁を務める最大与党「PDPラバン」がルソン島中部パンパンガ州サンフェルナンド市で開催した全国党大会でドゥテルテ大統領を多数の支持で副大統領候補に指名した。