宅配需要は韓国だけでなく世界的に急増している(写真:アフロ)

 韓国では、宅配が市民の生活の一部となっている。配送が非常に早く、便利な宅配に慣れた韓国国民は、日々スマホを片手に商品を購入する。しかし、コロナ禍の非対面購入の増加に伴い、宅配ドライバーの過重労働に起因する過労死や自殺が増加している。

 そこで配送員の労働環境と待遇の改善を求めて活動しているのが、全国民主労働組合総連盟下の宅配労働組合(民主労総・宅配労組)である。物流会社に対し、抗議やゼネラルストライキ(大規模スト)などの「闘争」を仕掛け、労働者の権利を主張してきた。

 そんな中、8月30日に京畿道金浦市の配送代理店の経営者が自ら命を絶った。遺書には宅配労組メンバーによるいじめが記されていた。今、韓国宅配業界では何が起きているのだろうか。

(石井 友加里:韓日・日韓翻訳家)

コロナ禍で尋常ではない負荷がかかる宅配運転手

 韓国の配送ドライバーは、毎日大量の物量を配送しなければならない。コロナ第1波の2020年春、KBSニュースでは、1日の配送件数が500件に達し、疲労困憊した宅配ドライバーの姿が映されていた。尋常ではない量である。

 配送員は大手宅配会社のユニフォームを着用しているが、あくまでも個人事業主だ。正社員のような待遇は受けられず、労働災害保険未加入の人も多い。

 2020年には急増した物量で無理が重なり、過労死する配送員数が増えた。宅配労組によると2020年には15人に及んだという。過剰労働で倒れた人はさらに多い。ドライバーの週の平均労働時間は週に約71.3時間。週6日として毎日約12時間働いていることになる。しかも、宅配物の仕分け作業時間は無給である。