韓国・国家情報院の朴智元院長(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 次期大統領選挙を約6カ月後に控え、野党の最有力候補である尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長側が朴智元(パク・チウォン)国家情報院長を国情院法・選挙法違反の容疑で高位公職者犯罪捜査処(公捜処)に告発した。「朴院長が尹候補を除去するための政治工作に加わった」との主張で、もし主張が事実なら、文在寅政権の情報機関が政権継続のために選挙介入したこととなり、文在寅大統領の弾劾にまで発展しかねない事案だ。

前検事総長を「刺した」告発

 事件は去る9月2日に遡る。「ニュースバース」という新参のインターネットメディアがある“スクープ”を放った。総選挙を目前に控えた昨年4月、最高検察庁に勤務する尹錫悦検事総長(当時)の側近検事が、与党議員や政権寄りの記者を検察に告発する告発状を作成し、野党「国民の力」所属の国会議員に代わりに告発するよう要請した——と報じたのだ。

 ニュースバースは、「このような行為は、総選挙で与党に不利な世論を形成するためのものであり、背後には尹錫悦前検事総長がいるだろう」とも主張した。

 ニュースバースの報道を総合すると、部長検事出身で昨年4月の総選挙で「未来統合党」(現・国民の力)候補として出馬して当選した金雄(キム・ウン)議員は、選挙直前に司法研修院同期の孫準晟(ソン・ジュンソン)最高検察庁捜査情報政策官が作成した与党関係者に対する告発状を受けとり、未来統合党の事務所関係者に渡した。そして今年7月になり、この関係者は、去年の4月に金雄議員と交わした「テレグラム」のメッセージや告発状のキャプチャーをニュースバースに提供したのだという。「テレグラム」とはセキュリティに優れたSNSで、秘密が要求される会話をするときによく使われる。2017年の大統領選挙当時、文在寅候補に有利になるようにネット世論を不正に操作した「ドゥルキング事件」に関与した金慶洙(キム・ギョンス)元慶尚南道知事も、「ドゥルキング」というハンドルネームのブロガーに世論操作を頼む際、テレグラムを通じて指示していた。