昨年12月1日、インドネシアの首都ジャカルタでパプアの独立を訴える人々。12月1日はパプア地方の人々にとっての「独立記念日」となっている(写真:AP/アフロ)

 インドネシアの東端、ニューギニア島の西半分を占めるパプア州と西パプア州からなるパプア地方は独立を求める反政府活動が盛んな地域だが、そこでまた緊張が高まっている。

 現地に治安維持のために展開している国軍の駐屯所が、反政府の武装組織による襲撃を受けて、兵士4人が死亡、2人が負傷する事件が起きたのだ。

 パプア地方では2021年4月以降、各地で武装組織と治安部隊による衝突、銃撃戦が繰り返されてきているが、その煽りを受け、10月2日から15日までの予定で開催される「国民体育競技会(PON)」の開催を危ぶむ声も出始めている。

 ジョコ・ウィドド大統領はこれまで何度か武装組織に対話による和平交渉を呼びかけてきたものの、実現には至っていない。というのも、武装組織が一枚岩ではなく、各地方の反政府組織が独自に治安当局への襲撃や待ち伏せ攻撃を実施しており、交渉の窓口さえ明確になっていない状況だからだ。

 それぞれの武装組織側は政府に対して、軍や警察による「度重なるパプア住民への人権侵害」を理由にパプア地方からの撤収を要求している。要するに、そもそも和平交渉の前提条件の段階で難問が横たわっているのだ。

夜明け前に刃物で駐屯所襲撃

 地元メディアによると、今回の駐屯所襲撃の詳細は次の通りだ。

 8月2日午前4時ごろ、西パプア州西部山岳地帯にあるメイブラット県南アイファット地方キソール村にある軍の駐屯所が、正体不明の男ら約30人によって急襲された。男らは斧や鋭利な刃物で武装しており、兵士4人を殺害し2人を負傷させて逃走した。

 軍は直ちに約50人の兵士からなる捜索部隊を編成して犯行グループの追跡捜索を開始。その後パプア地方の独立武装組織である「自由パプア運動(OPM)」の地方分派とされる「西パプア解放軍(TPNPB)」のセビー・サンボ報道官が、報道機関に対して「犯行声明」を出したことで同武装組織による犯行と判明した。

 同報道官は「我々の地方司令官であるデニー・モスとその兵士が攻撃を行った。TPNPBの最高司令官ゴリアテ・タゴンの命令によるものだ」と明らかにした。

 その後、西パプアの国家警察は襲撃事件の容疑者として2人を逮捕、さらに2人の行方を追っていることを明らかにした。逮捕された2人は、同州ソロンの警察署で取り調べを受けているがおおむね犯行を認めているという。