インドネシア陸軍が女性志願者の新規採用に際して長年にわたって実施してきた、いわゆる「処女検査」を全面的に廃止する方針を明らかにした。
インドネシアは世界第4位の2億7000万人の人口を擁する大国だ。そしてイスラム教を国教としているわけではないが、人口の約88%をイスラム教徒が占め、世界で最も多くのイスラム教徒を抱える国でもある。そのためインドネシア社会には、イスラム教の「原則婚前交渉禁止」や「貞操観念重視」の習慣が深く根付いており、その延長線上に軍の「処女検査」もあった。
その因習に一石を投じる決断をしたのはインドネシア陸軍のアンディカ・プルカサ参謀長だ。8月10日、地元メディアに対して「新規採用の女性に対する処女検査の廃止」を明らかにしたのだ。その理由として、アンディカ参謀長は「新規採用の際の健康診断は軍務に耐える健康な身体であるかどうかを判断するために実施されるものであり、処女検査は健康状態とは無関係であり、不要である」としている。
女医による触診という屈辱的検査
だが、いったいなぜ軍の入隊に際して「処女か否か」を確かめる必要があったのか。
その根拠としては、「武装組織、治安当局として任務を遂行するにあたり、高度な倫理規範、宗教信条の持ち主であること」が不可欠であると説明されてきた。ここにイスラム教的な倫理観が反映されている。
では、性交渉の有無の検査はどのようにして行われるのか。そのやり方は極めて原始的だ。軍や警察の女性医官が下半身を露出させた女性の新規採用希望者の「膣にゴム手袋をした指を差しこんで処女膜の状態を調べる」というものだった。
ここで、未婚でありながら性交渉の可能性が確認されると、原則として採用が取り消されたのだという。
しかし、何よりもこの直接の「触診」が志望者の若い女性にとっては極めて「恥ずかしく」そして「屈辱的」な検査方法であるとして、女性団体や人権組織からは「即刻廃止すべき」と以前から批判を受けていた。