7月6日、トラックの荷台に乗せられ、サガイン州ケールの病院に向かうコロナ感染者とその親族(写真:ロイター/アフロ)

 クーデターで実権を掌握した軍と、それに反対し民主政府復活を求める一般市民、そして国境地帯に拠点を構える複数の少数民族武装組織との衝突が激化しているミャンマーで、もう一つ、極めて深刻な問題が起こっている。コロナ感染者の増加が加速し、新規感染者数が連日、過去最高を記録している。

加速する感染者の増加

 ミャンマーのコロナ感染は、昨年4~5月に比較的小さく短期間で第一波を乗り越えた後、8月中旬ごろまでは、新規感染者が2ケタになることは稀というほど、落ち着いた状況が続いていた。ここまではコロナ防疫は非常に上手く行っていたと評価されていた。

 しかしその後、8月下旬から年末にかけて、一日の感染者が1000~2000人ほどになる第二波を経験。こちらは第一波に比べると期間も長く、感染者も増え、大きなダメージとなったが、年が明け、2月になるころにはだいぶ収束し、日々の感染者もゼロからせいぜい20人台となっていた。

 状況が一変したのは5月下旬から6月になるころからだ。6月1日に新規感染者が122人と100人台に入るとそこからは早かった。1カ月後の7月1日には2070人と2000人台に突入、7月14日には瞬間風速的ではあるが7083人の新規感染者が報告された。

 もちろん感染死者数も同様の急カーブを描いて増えている。7月15日以降は連日100人以上の死者が出ており、20日には286人が亡くなった。

 しかし、この悲惨な数字も、実態のごく一部と見られている。軍政による報道管制などの影響で正確なミャンマーの感染状況は不明な点が多い。さらに、すでにミャンマーの医療崩壊は深刻なレベルに達しており、医師の手当てを受けられず、自宅などでなくなる患者も多く、そうした人々が感染者や感染死者にカウントされていない可能性が高いからだ。