(朴 車運:韓国ジャーナリスト)
韓国男性にとって、軍隊は死ぬまで消えないトラウマだ。筆者は1998年から2000年まで26カ月を軍隊で過ごしたが、いまだに軍隊に入隊する夢や軍隊の時の夢を見る。軍隊は韓国男性に一生付きまとう、二度と経験したくない記憶である。
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軍隊をネタにした映画やドラマは数多くあるが、そのストーリーは軍隊経験のある韓国男性にとってほとんどが話にならないものだ。筆者が韓国で制作された軍隊関連のドラマや映画を見ることはほとんどない。実態と異なるストーリーが中心で、軍隊という閉鎖された組織の特性を描いていないのだ。
韓国の男性にとって、軍隊はロマンや国家に奉仕する使命感などという世界とは程遠い。国民としての義務を果たすため、何の補償もなく、最低賃金にも満たない給与で、若い盛りの短くない時間を閉鎖された空間で過ごさなければならない。軍服務が楽しい思い出だったという人はほとんどいない。
その中で、デジタルコミックのウェブトゥーンを原作にしたネットフリックスの『D.P. -脱走兵追跡官-』は、韓国の20代、30代前半の男性から高い支持を受けている。
ネタバレになるのであまり内容はお知らせできないが、D.P.(脱走兵追跡官) に抜擢された新兵が感じる矛盾を刺激的に描いている話題作である。もっとも、反響と共感は別物で、多くの人が軍隊で起きたあらゆる不条理や非合理的のトラウマを思い出したという。
筆者は今回の韓国ドラマ「D.P.」にほとんど関心がなかったが、周囲から面白いと聞かされて見るようになった。朝鮮日報は「2030世代の爆発的な呼応」(2030世代とは、今の20代と30代のこと)や「軍服務時代の悪夢」といった刺激的な表現で紹介した。
「D.P.」の主なエピソードに以下のものがある(ネタバレあり)。
●睡眠中の後任兵に防毒マスクをかぶせて拷問する
●釘をさした壁に後任兵を押しつけて傷つける
●厳しい生活状況に置かれている後任兵の母親の手紙を先任兵が声を出して読み、「お前の家は乞食か」と暴言を吐く
●夜間勤務中、後任兵に自慰行為を強要する
●夜間に後任兵を集合させて殴打する