南北軍事境界線付近に集まる韓国軍の自走砲「K-9」(写真:AP/アフロ)

 韓国人男性であれば誰もが体験する軍隊での服務経験。筆者の朴車運氏も、1990年代後半、21歳の時に軍服務を経験している。その2年2カ月の過酷な体験を振り返る3回目。今回は射撃や行軍など、実際の訓練について。※1回目から読む

(朴 車運:ジャーナリスト)

 訓練所にある程度慣れた頃、射撃、手榴弾の投擲、各個戦闘、行軍などの訓練が行われる。手榴弾投擲は軍服務期間中、ただ一度の機会である。手榴弾投擲は危険なため、本人が望まない時など例外的に外される可能性があった。一度のミスが大惨事につながりかねず、実際、事故が多かったのだ。

 射撃は唯一、下士官や教官による殴打が許される訓練だった。訓練所では訓練兵を殴ったり、暴言を吐いたりできない決まりになっているが、射撃場は危険を伴うため、厳しい指導が認められていた。現に、射撃場は最も人命に関わる事故が多く発生する場所で、訓練中の自殺が最も多い場所でもある。

 射撃場では様々な規則に従って行動しなければならない。単に銃を撃つだけではなく、PRI と呼ばれる射撃予行動作を絶えず繰り返さなければならない。 銃口は常に空に向け、弾丸の数も徹底的に確認する。40発程度を射撃するが、一定の点数に達しなければ点数を満たすまで繰り返す。

 韓国人男性の80%以上が銃を撃つことができるといわれるほど、軍隊で最も重要な訓練だ。 1992年、米ロサンゼルスで黒人暴動が起きた時、コリアンタウンを守り抜いた人々の大半が韓国で兵役を終えた人々だったことを見れば、韓国の軍組織が想像以上に体系的だとわかるだろう。

 銃器の扱いに慣れたコリアンタウンの韓国人は軍服務の経験をもとに、自主的に区域別自警団を組織化。コリアンタウンの治安を維持し、黒人による略奪を阻止した。この時、黒人暴徒も銃器で武装していたが、彼らはあくまでも一定の規則なしに銃を撃つ威嚇射撃である。

 それに対して、兵役を終えた韓国人で構成された自警団は目標物を設定して正確に撃つ照準射撃だ。軍隊でしっかり教育を受けた韓国人はいわゆる拳銃ではなく、殺傷のためのアサルトライフルを扱った経験から、目標に向かって正確かつ組織的に行動した。このことが在米韓国人放送局のメディアで報じられると、暴徒らはコリアタウンの襲撃をやめたという。