女性スキャンダルが浮上した金正恩総書記(写真:代表撮影/Inter-Korean Summit Press Corps/Lee Jae-Won/アフロ)

 最近、平壌の若い女性たちを怒り狂わせている金正恩総書記に関する女性スキャンダルがある。その相手は、なんと北朝鮮のエリート芸術団である「国務委員会協奏団」の歌手、キム・オクチュ氏だという。

 平壌の消息筋の表現にならえば今、平壌の女性はキム・オクチュ氏を不倶戴天の敵のように憎み、こき下ろしている。その状況は、「日本統治からの解放以来で初の事態」とささやかれるほどだというから、尋常ではない。何が彼女たちをそこまで怒りに駆り立てているのか。

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 今回のスキャンダルの発端となったのは、労働新聞やテレビで紹介された一枚の写真だ。このパブリックな写真の中で、金正恩総書記の隣に座った女性が今回の主人公、キム・オクチュ氏だ。

 実は同じ写真を、しばらく前に韓国のマスコミが報道した際に、筆者も目にしていたのが、その時は特別目に付いたことはなかった。

 ぱっと見て、「金正恩がこれほど気さくに、若い人たちと交流をすることもあるのだな。けれど、普段はしないようなことをしているのを見ると、ひょっとして彼ももう寿命が長くないのではないかな」などと、意地悪な考えが頭をもたげた程度だった。

 ところが、平壌の消息筋から聞こえてきたのは、まったく想像を超えた反応だった。

これが問題の写真(提供:金興光氏)

 この写真を新聞や放送で見た北朝鮮の女性たち、特に平壌の若い女性は、写真の中のキム・オクチュ氏の両手が金正恩のどこに触れているかを巡り、密やかに、しかし熱い議論が交わされ始めたのだという。

 人によって見え方が違うが、キム・オクチュ氏の手が金正恩の手の上に重ねられているようにも、また金正恩の肩にキム・オクチュ氏の手がかかっているようにも見える。

 それが事実だとするなら、多くの参加者と共に写真を撮る状況で、わざわざ恋人のように金正恩総書記に媚びた姿で写真に収まったキム・オクチュ氏について、北朝鮮の人々、特に若い女性たちが複雑な感情を抱くであろうことは想像に難くない。

 たまたま映った時の見え方がそうだったのかもしれないが、写真は雄弁だ。この写真は携帯電話を通じて瞬く間に飛び交い、平壌市の話題をさらった。