多くの人が行き来する新宿駅前(2021年8月23日、写真:つのだよしお/アフロ)

(高橋 義明:明海大学経済学部教授)

 全国を襲う新型コロナの第5波の中、今週、大阪、愛知などで新規感染者数が過去最高を記録するなど、その行方は依然として不透明である。

 拙稿「3回目の緊急事態宣言の効果は? 飲食の場は本当に急所だったのか」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65134)では、緊急事態宣言で宣言自体が感染削減効果を発揮したことはなく、むしろ正月休み、ゴールデンウィークの長期休暇をきっかけとして都心への出勤が激減したことが実効再生産数(1人が何人に感染させるか)の急激な低下をもたらしたことを議論した。今回も緊急事態宣言対象地域で飲食店の時短要請を行っているが、時短が効果を発揮していないのは当然の帰結といえる。そうした中、知事会は8月20日に、欧米などで行われたロックダウンの法的検討を提案した。

 国会は現在開会されておらず、菅首相が衆議院議員任期満了前の解散のタイミングを図っている中では法整備はできない。では現行法制下ではロックダウンは不可能なのであろうか。本稿では、現行法下でどのような形のロックダウンが可能なのかを考えてみたい。

現行法下でのロックダウンの選択肢

 ロックダウンでも世界で行われる政策には様々なものがある。結論を先に挙げると私が考える政策オプションは以下の3つである。

【オプション1】特措法第45条2項に基づき、従業員の出勤を週1回以下にできない企業・事業所に休業要請

【オプション2】感染症法第16条に基づき、感染者が発症前2日以降に出勤していた企業・事業所の情報を一覧・地図化し、来客・取引先の接触者に自宅待機、PCR検査に誘導(百貨店など大企業は既に感染者発生情報を公表済)

【オプション3】感染症法第16条に基づき、感染者の町丁目別感染率をマップ化し、感染リスクを見える化(感染研が東京都心部のマップを公表済)