中国・江蘇省の省都である南京市のスタジアムに設置された会場で新型コロナワクチンの接種を受ける住民たち(2021年8月2日、写真:新華社/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国で新型コロナウイルス・デルタ株の感染がじわじわ広がっている。国家衛生健康委員会の発表では、8月9日だけで新たな本土感染確定診断例(確診)は全国で108人。この3カ月以来、全国での新たな確診例が100を超えたのは初めてだという。

 日本は東京都だけで1日数千人の新規感染者を数えているのだから、なんだ、たった100人か、と思うかもしれない。だが、そのわずかな感染者のために、中国は国民の生活と経済を犠牲にした徹底したロックダウンや全市民を対象としたPCR検査を実施して、「ゼロ感染」を目指している。

 それでも感染者が出続けている、というのであれば、このデルタ株がいかに手ごわいウイルスであるか、ということではないか。そして、それ以上の感染力という噂のラムダ株の脅威は言わずもがなだろう。

懸念される水害被災地の感染拡大

 中国における今回のデルタ株感染拡大の発端は、7月10日に南京国際空港に到着したロシアからの旅客機に新型コロナ感染者が搭乗していたことだった。7人の旅客が到着後の検査で陽性とわかり、速やかに隔離された。だが、そののち、7月20日までにこの機内の清掃にあたった清掃員9人のデルタ株感染が確認された。清掃員らは防護服を装着していたはずだが、着脱の時の不注意で感染した模様。彼らも感染が判明すると即、隔離されたが、それまでの間に感染は広がっていた。