(福島 香織:ジャーナリスト)
中国では9月に始まる小中高校の新学期から、習近平思想の学習強化と新たに統一編纂された歴史教科書の導入が全面的に始まる。教科書統一化の方針は2019年に打ち出され、歴史、国語、道徳、法治から試験的に導入し、2022年秋までにはすべての教科で統一編纂教科書が導入されることになっている。
中国の教科書はこれまで、複数の出版社から出ていた。圧倒的多数を占めているのは人民教育出版社の教科書だが、上海には上海の教科書出版社、江蘇には江蘇の、広東には広東の教科書出版社があり、それなりの地域差があった。学校ごとに児童・生徒の水準に合わせて副教材もかなり違いがあった。上海などのレベルの高い小学校では、各家庭が自費で子供に就学前教育を行わないと子供はついていけなかった。
そこで、6月に打ち出された教育改革「双減」(宿題と塾を減らす)では、学習塾による教科学習の一律禁止、就学前教育の一律禁止通達が出された。
そこに加えて、教科書も全国統一版を導入することになった。教科書が全国で統一されれば、義務教育レベルにおいては地域差が是正される、ということになる。
もちろん地方、農村地域の教育レベルが底上げされることが望ましいが、現実的には、都市の高いレベルを下げる方向に調整が進むのではないか。そして学力の下がった子供たちに習近平新思想を教えるとどうなるのだろう。