靖国神社に参拝した安倍晋三前首相(8月15日、写真:ロイター/アフロ)

 また靖国の夏がやってきた。複数の閣僚や安倍晋三前首相が靖国神社に参拝し、菅義偉首相は参拝せず玉串料を納めた。

 中国は「強烈な不満と断固たる反対」を、そして韓国は「深い失望と遺憾」を表明した。いわば毎年恒例の茶番劇である。

 国に殉じた先人に対し、国民が尊崇の念を表し、感謝し、平和を誓うのは世界の常識である。

 米国ではアーリントン国立墓地に、韓国ではソウル国立墓地(国立顕忠院)に、フランスでは凱旋門の無名戦士の墓に、国家のリーダーが国民を代表して参拝する。

 外国の要人来訪時も、まず参拝し献花するのが国際常識である。だが日本だけが違う。

 平成25年(2013)年12月26日、安倍晋三首相が靖国参拝して以来、現職首相は参拝していない。日本はなぜ国際常識に沿ったことができないのか。

 靖国神社は、大村益次郎の発案のもと、明治天皇の命により、戊辰戦争戦死者を祀るために明治2年(1869年)に創建された東京招魂社に由来する。明治12年(1879年)に靖国神社と改称され、約250万の英霊が祀られている。

 昭和60年(1985年)までは、首相が毎年、靖国神社に参拝していた。この事実を知る人も少なくなった。戦後76年間に限定すると、35人の首相のうち、15人が計68回参拝している。

 昭和26年(1951年)10月、秋季例大祭には吉田茂首相以下、閣僚、衆参両院議長が揃って、戦後初めて公式参拝し、サンフランシスコ講和条約調印によって日本が再び独立できた旨を英霊に報告している。

 中国が突然、靖国参拝を許さないと言い始めたのは昭和60年(1985年)のことである。