(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
新型コロナ変異株の流行に対する危機感は、韓国でも高まっている。最近の日本における急激な感染拡大は、ここ韓国でも常に報じられている。
感染力がインフルエンザウイルスの4倍とも言われる変異株が猛威を振るい始めた2週間ほど前、勤務先のホスピス(緩和ケア病棟)にいる家内から「患者にPCR検査を行ったところ陽性だった」との連絡が入った。
これは当事者にとってみれば衝撃的な事件である。院内感染の危険性があるのはもちろんだが、それに加え、病院存続の危機に直面しかねないからだ。昨年(2020年)には、クラスターが発生したホスピスが閉鎖に追い込まれ、それを契機に全国の病院で患者と勤務者に対して毎週、PCR検査が義務付けられた。
韓国では特別な事情がある場合を除き、医療従事者や患者へのワクチン接種はすでに終えている。そんな矢先の「陽性」だった。
全員が陰性でなければ外出できない
陽性患者が確認されたその日のうちに、院内の人全員にPCR検査が実施され、翌日の午前中に結果が出るまでは院外に一歩たりとて出られないという。連絡を受けたのが午後だったから、その日は帰宅などできず、勤務先で夜を明かすしかない。