新型コロナウイルス感染症第5波の拡大はすさまじく、感染患者が入院したくても入院できなくなるなど、過去1年半の中でもっとも深刻な局面を迎えている。集中治療の最前線でコロナと闘う讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)は、「今は自分の身を守ることを考えて欲しい」と訴える。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第62回。
入院したくても入院できない
1日あたりの全国の新規陽性者数が2万人を超えてしまいました。
感染の主体は現役世代です(第60回参照)。埼玉県の7月27日から8月2日の新規陽性者5750人の内訳は、10代以下が16%、20代が32%、30代が18%、40代が16%、50代が12%。50代以下を合計すると94%にも達しています。新型コロナウイルス感染症は若年層は重症化しにくいといっても、一定割合で重症化しますし、現在主流のデルタ株はこれまでのものより重症化しやすいことがわかってきています。
これだけ若年層の新規陽性者が増えると入院が必要となる患者や人工呼吸器が必要となる患者もたくさん発生します。実際、埼玉県では30代でECMO(体外式膜型人工肺 第3回参照)が必要になった方がいます。
この数週間で埼玉県内のコロナ対応のベッドは一気に埋まってしまいました。その結果、入院したくても入院できない事例が増えてきています。自宅療養中に症状が悪化して救急車を呼んでも、入院できる病院が見つからず、症状によっては結局自宅療養を続けざるをえない──といったことが現実に起こっています。それはデータにも表れています。
8月13日、埼玉県の新規陽性者数は過去最高(13日時点)の1696人を数えました。その結果、患者数は1万9459人となりました(414人が退院・療養終了したため前日比1282人増)。この内、入院している患者は1177人 (内重症者111人)、宿泊療養している方は624人、入院・宿泊療養等調整中が2793人、自宅療養が1万3059人となっています。ここで注目していただきたいのは、入院・宿泊療養等調整中と自宅療養の数字です。感染した方の内、入院できているのは6%にとどまるのです。