新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が急速に進む中、子供の接種については心配する声も大きい。子供の新型コロナワクチン接種のリスクとベネフィットはどう捉えるべきなのか。勝田友博医師(聖マリアンナ医科大准教授)に讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が訊く。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第58回。

 前回に引き続き、聖マリアンナ医科大学小児科学教室の勝田友博准教授に子供の新型コロナウイルス感染症についてお話を伺います。今回は、小児(20歳ぐらいまで)のワクチン接種について、専門医の立場から客観的・科学的な見方をお聞きしたいと思います。

勝田友博(かつた・ともひろ)氏

◎勝田 友博(かつた・ともひろ)氏
 日本小児科学会専門医指導医・日本感染症学会専門医指導医・日本小児感染症学会暫定指導医。2001年聖マリアンナ医科大学卒。日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会が行っている国内小児新型コロナウイルス感染症患者のレジストリ調査の実務を担当している。

ワクチン忌避の主な原因は「3C」

讃井 小児科の王道は感染症だという印象を私は持っているのですが、勝田先生は感染症をずっとやってこられたのですか?

勝田 私の専門領域はワクチン教育であり、その中でもとくに「ワクチンヘジタンシー(ワクチン忌避(きひ)、接種へのためらい)」対策を研究テーマにしています。具体的には、「ワクチンを躊躇(ちゅうちょ)する人たちに対してどのような説明をすると安心して接種してもらえるのかを検討しています。

讃井 ワクチン忌避について、具体的にはどのような活動をしていらっしゃるのですか?

勝田 ワクチン忌避の主な原因は「3C」にあると言われています。一つ目Cは、Complacency(自己満足)。「その感染症はもう流行っていないのでワクチンは打たなくても大丈夫、もしかかってしまっても自分は健康で体力があるから大丈夫」といったような考えを持ってしまうことです。二つ目は、実際に接種する時間や場所が確保できないとか、お金がかかるというような、Lack of Convenience(利便性の欠如)。そして、三つ目は、ワクチンそのもの、あるいは接種を推奨する人を信じることができないといった、Lack of Confidence(信頼性の欠如)です。こういったワクチン忌避をお持ちの方に説得力のある説明をするためには、正確な医学的な根拠(エビデンス)が必要となります。私たちの主な活動はそのようなエビデンスを作成することです。