最初は手探りだった新型コロナウイルス感染症の治療法は、この1年半の間にある程度確立してきたといえる。駆虫薬「イベルメクチン」がその標準治療にならない理由と、今後の可能性について、讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が掘り下げる。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第55回。
私が勤務する自治医科大学附属さいたま医療センターでも入院中の新型コロナウイルス感染患者は減ってきました。しかし、救命センターに来院する方の中に、ときに検査の結果、陽性を示す患者がいらっしゃいます。また、まれに来院時に陰性でも入院後に発症し、検査が陽性になる場合があるので気は抜けないわけですが、職員のワクチン接種が終了したので、患者から職員を介して院内感染に発展する可能性は相当低くなったと思います。もちろんワクチン接種後に感染する確率、他人に感染させる確率が完全にゼロになるわけではありませんが、接種の進展によりこれらの確率が確実に減少し、社会における感染予防効果が出てくると思います。
ワクチンの安全性と有効性については、第36回・第37回で述べたように非常に高いといえます。新規感染者数がほぼゼロになったイスラエルの例を見ても、新型コロナ感染症を収束させる決め手はやはりワクチンだといえるでしょう。日本でも接種は急速に進んでいますので、数カ月後には今とは異なる景色が見られるのではないかと期待しています。
しかし、多くの方がワクチン接種を終えるまでは、まだまだ油断できません。「変異ウイルスは感染力が強く、重症化率も高い。若年層も感染しやすく、重症化する」という研究報告がいくつも出されています。実際、年初の第3波では重症患者は80代が多かったのに対し、現在の第4波では70代前半より下の世代が多くなり、40代・30代でも一時的に悪化してICUに入室する方が増えています。