新型コロナウイルス感染症第5波の感染拡大が止まらぬ中、緊急事態宣言下で行われている東京オリンピック。その競技会場で救急医療はどのように運営されているのか? 「埼玉スタジアム2002」の医師団を統括している守谷俊・自治医科大学教授に、讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が現場で起こっていることを訊く。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第61回。
連日熱戦の続く東京オリンピックですが、医療従事者もそれを縁の下で支えています。では、オリンピックの現場ではどのような医療体制が築かれているのでしょうか? コロナ下で医療負荷となっていないのでしょうか? 埼玉スタジアム2002を任されている自治医科大学附属さいたま医療センター救命救急センター長の守谷俊先生に伺いました。
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守谷 まず最初にお断りしておきたいのですが、私がお話しできるのは、担当した埼玉県内のひとつの競技会場の事例だということです。東京オリンピックの医療体制の全体像、あるいは他会場の状況については正確に知りませんし、お話しできる立場でもありません。
讃井 担当されたのはどの会場で、どのような役割を担っていたのですか?
守谷 サッカー会場のひとつ、埼玉スタジアム2002の医師団を統括するVMO(ベニュー・メディカル・オフィサー)です。東京オリンピックの競技会場はおよそ50カ所、そのうち埼玉県内には4カ所あり、医療のオペレーションは各競技会場のVMOに任されています。VMOは、選手用医師団、観客用医師団をつくり、それを統括。さまざまな事態を想定してオペレーションの計画を立て、準備をします。さらに傷病者が出た場合に、搬送するかどうかの最終的な判断、搬送先の決定を行うのもVMOです。
讃井 準備段階から埼スタのオペレーションを一任されていたのですね。