8月12日、北スマトラ島で新型コロナのワクチン接種を受ける学生(写真:AP/アフロ)

 懸念していたことが、どうやら現実になったようだ。

 コロナウイルスの感染抑止に失敗しているインドネシアで、政府・保健省が毎日公表している感染者数と感染死者数のうち、「感染死者数」が実態を正確に反映していない不透明なデータである、との指摘が独立データ機関からなされている。

 インドネシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国中でもっとも新型コロナ拡大の被害を受けている国と言っていい。一日の新規感染者数が5万人を優に超えていた7月半ばに比べれば多少落ち着いては来ているものの、8月15日時点でも一日に2万813人の感染が新たに確認されている。8月時点での累計の感染者数は360万人以上、同じく感染死者は10万人超と、いずれもASEANの中でも群を抜いて悪い数字となっている。

 ところが、政府が公式統計として発表しているこれらのデータに疑問が呈され、実は状況はもっと悪かった、と指摘される事態となった。政府に対する国民の不信、そしてコロナに対する不安がまたもや高まっている。

政府公表数字とのギャップ深刻

 インドネシアではかねてから政府発表の感染に関する各種データが「実態を正確に反映していないのではないか」との声が出ていた。今回の独立データ機関である「ラポールcovid19」による政府統計への不透明さ指摘は、こうした不信感を、具体的数字を伴って裏付けることになった。

 ラポールcovid19は、8月11日に発表した書簡の中で、彼らが独自に集計しているコロナ感染死者数と保健省の公表数字には大きな違いがあり、政府はデータの透明性を早急に確保する必要があると強く指摘した。

 同機関は独自に全国510の地方自治体から毎日データを収集して集計している。彼らが「感染死者数」としているのは、保健省が対象としていない「自宅隔離中の感染者」や「病院や自宅以外で隔離されて療養している感染者」の死亡事例が含まれた数字となっていると説明。

 一方、政府側の統計で「病院や保健施設などの医療機関以外で隔離、療養して死亡した患者数」を対象者としてカウントしていないため極めて不正確で、「実態を過小評価している」としているのだ。

 具体的に言えば、同機関による集計では8月7日までの感染死者数は累計で12万4790人となっているが、同日までの保健省発表の公式統計では10万5598人となっており、その差は1万9192人となっているという。

 感染死者数で公式データと独立機関の集計の間でこれだけの「ギャップ」が生じていることに国民は大きな衝撃を受けている。一時に比べれば新規感染者数が減少し始めていることで楽観論が広がりつつあったが、その状況が一転、感染拡大と感染死への警戒感が再び高まっている。

 さらにラポールcovid19によると、2021年6月から8月7日までに病院以外で感染死した人は「少なくとも3007人以上」。この数字も全ての地方自治体からデータを得ている訳ではないことを理由に「実際にはさらに多い数字とみられる」という。