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(英エコノミスト誌 2021年7月31日号)

自由で開かれたインド太平洋戦略に参加し、南シナ海に入った英国海軍の空母「クイーンエリザベス」(右)。タンカーとオランダ軍のフリーゲート艦が付き添っている(7月29日、米海軍のサイトより)

中国の目的は不明で、米国は不安を募らせている。

 とある蒸し暑い日。中国北部の都市・天津で、米国政府と中国政府の話し合いが行われた。今年1月のジョー・バイデン氏の大統領宣誓就任以降に中国で行われた協議としては、最も上位の政府高官によるものだ。

 だが、ウェンディ・シャーマン米国務副長官と中国外務省の次官による7月26日の対面は、打ち解けた雰囲気を作るに至らなかった。

 むしろ、世界で最も重要な超大国関係を取り巻く雰囲気をさらに重苦しくしただけだった。

 米国政府の広報担当者によれば、シャーマン氏は中国と「厳しい競争」になることを明言したうえで、新疆ウイグル自治区で「進行中のジェノサイド(集団虐殺)」など不愉快な話題をいくつか持ち出した。

 また気候変動、麻薬、アフガニスタンなどの問題に取り組む際の協力を提案した。

 しかし、そのオリーブの枝を中国の謝鋒外務次官はポキリと折った。

 次官は、米中関係が「膠着状態」にあると指摘し、米国の狙いは「中国を倒す」ことにあると激しく非難したのだ。

 その上司に当たる王毅外相も、関係を改善するのか「衝突と対決」に向かうのか、どちらかを選ぶよう米国に求めた。

米社の衛星写真で数百基のサイロ確認

 ありがたいことに、ともに核兵器を保有する米国と中国は、冷戦時代のソビエト連邦と米国ほどには軍事衝突に近づいていないように見える。

 だが、天津で外交官同士の論戦が行われているちょうどその頃、米科学者連盟(FAS)という研究機関が、新疆ウイグル自治区東部にある哈密市近郊で中国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)用のサイロ(地下発射施設)を110基も建設しているのを見つけたと発表した。

 その1カ月前には、カリフォルニア州の非政府組織(NGO)であるジェームズ・マーティン不拡散研究センターが、東隣の甘粛省の砂漠にある玉門というところで建設中のサイロを120基発見していた。

 どちらの発見も、米企業プラネットから入手した衛星写真を詳細に分析した成果だった。

 核兵器専門家の間に衝撃が走った。