米国は、ミサイル防衛システムはロシアに向けられたものではないと強調しているが、中国への使用についてそのようなことは明言していない。

 しかし、もしサイロ同士を地下通路で結んでミサイルを移動できるようにすれば、どのサイロを攻撃すべきか、米国は全く分からなくなる。

 その意味では、米国が1970年代に立ち上げた「MX」プログラムが、中国にそのような策略を思いつかせたのかもしれない。

 ユタ州とネバダ州に点在する5000基近いサイロの間で200発のミサイルを移動させようというものだった。

 プログラムは、1981年に当時のロナルド・レーガン大統領によって棚上げされた。

 レーガンはこの計画を、ごく単純な仕事しかしないのに仕組みだけはやたらに複雑な機械を面白おかしく描いた米国の漫画家にあやかって「ルーブ・ゴールドバーグ・スキーム」と呼んで茶化していた。

 米国のシンクタンク、カーネギー国際平和基金のジェームズ・アクトン氏は、中国のサイロの配置からは同じような狙いがうかがえると言い、中国北部の内モンゴル自治区にある古いサイロは互いに数十キロずつ離れているが、甘粛省のそれは約3キロずつしか離れていないと指摘する。

 また、ほとんどの東風(DF)41は恐らく複数の弾頭を搭載するだろうから、新しいサイロすべてに核弾頭付きミサイルを配備できるほどの核分裂物質は入手できないだろう、ほかの核兵器でも使うことを考えればなおさらだ、ともアクトン氏は述べている。

 中国は1980年代にプルトニウムの生産を止めたと考えられている。生産を再開した証拠はほとんどないが、海に面した福建省に建設中の新しい原子炉では、将来的に生産を行う可能性がある。

懸念強める米国

 中国は単にシェルゲームを計画しているだけだということに誰もが納得しているわけではない。

 理論的には、そして長期的には、230基もの新しいサイロが計数百個の核弾頭を積んだ新型ミサイル230発の配備を支えられる。1発のミサイルには弾頭を少なくとも2個積むことができるし、ひょっとしたらもっと多く積めるかもしれないからだ。

 米国当局は以前から、中国は急速に核戦力を増強していると主張してきた。

 中国の軍事力に関する直近の年次報告書(昨年9月発行)で、国防総省は、中国が備蓄する弾頭は今後10年間で「少なくとも2倍に増える」との見通しを示している。