もう数十年もの間、中国は「最低限の抑止力」しか持たない方針に従っており、敵に反撃することはできても綿密に準備した核戦争を戦うことはできない比較的小規模な戦力を維持管理してきたからだ。
米国防総省は、中国は200個ほどの核弾頭を実戦配備していると見ている――これは英国やフランスとほぼ同じ数だ――が、ICBMは100発程度にすぎないと考えている(ちなみに、米国とロシアは合わせて1万2000個近い核弾頭を所有している)。
FASは、冷戦期の米国やソ連によるサイロ建設以来の「大規模な」建設であることが衛星写真からは示唆されると話している。米国の核兵器を管理している戦略軍は7月27日、ツイッターで反応を示した。
「我々はこれまでずっと、世界が直面する脅威の増大とそれを取り巻く秘密のベールについて語ってきたが、それが何であるかを一般市民がここ2カ月の間に2度も目にしたことになる」
また米国務省は、建設中のサイロの発見は「深刻な懸念材料」であり、中国が長年の核戦略から「逸脱している」ことを示していると述べた。
意図はシェルゲームか
専門家たちはこれらのサイロを、米国本土の大半が射程に入る中国の最新型ICBM「東風(DF)41」のために設計されたものだと見ている(地図参照)。

問題は、なぜこれほど多くのサイロが必要になるのか、だ。
まず考えられるのは、ミサイルの「シェルゲーム」を行えるようにするという答えだ。
シェルゲームとは、平らなテーブルにコップ3個を逆さに置き、そのいずれかに玉を1つ入れてからすべてのコップをすばやく動かし、どれに玉が入っているのか分からないようにする昔からのトリックのことだ。
中国には、ミサイルの正確なありかが諸外国に知られないようにしたい立派な理由がある。
同国は長年、危機の際には、米国の巨大な核戦力によって――あるいは、非常に正確に相手を攻撃できる新世代の通常弾頭ミサイルによってでさえも――中国の貧弱な地上軍が吹き飛ばされてしまうと恐れてきた。
また、仮に中国のミサイルの一部がそのような攻撃を免れても、今度はアラスカやカリフォルニアの迎撃機を含め、急速な発展を遂げている米国のミサイル防衛システムによって飛行中に無効化されてしまうかもしれない。
言い換えれば、中国の核戦力は役に立たない代物になりかねないわけだ。