ヤンキースで検討されている「マドン監督引き抜き」

 ただ、繰り返すが大谷のFAは再来年のオフ。一見すれば、まだ当面先のように思える。しかし過去に苦い経験を持つキャッシュマンGMは、今度こそ同じ轍を踏まぬよう万全の受け入れ態勢を今から整えていきたい構えのようだ。大谷がプレーしやすい環境を作り上げるため、1つのプラス材料としてヤンキースフロントの中で提案されているのがジョー・マドン監督の“引き抜き”だという。

 荒唐無稽で突拍子もないと捉えられるかもしれないが、これは必ずしも「大谷獲得」を前提として持ち上がっている話ではない。エンゼルスと3年契約のマドン監督は来季が最終年。契約切れのタイミングでマドン監督に次期指揮官として白羽の矢を立てるというプランは、そもそも現在のアーロン・ブーン監督に対するヤンキース幹部の評価が芳しくない昨今からフロントの中で急浮上していた。

 マドン監督はかつて弱小球団だったタンパベイ・デビルレイズの指揮官に2006年から就任。2008年にレイズと改名してから一気に独自の理論に基づく型破りな采配を駆使しながらチームを強豪へと変貌させ、卓越した手腕を発揮するようになった。その後、就任したシカゴ・カブスでも監督として71年ぶりにチームをナショナル・リーグ優勝へ導き、それまでシカゴにカブスの都市伝説として浸透していた「ヤギの呪い」を解いたことでも有名だ。アメリカン・リーグとナショナル・リーグの両リーグで最優秀監督に選ばれた屈指の名将である。

 ヤンキースもマドン監督にはレイズ指揮官時代、同じア・リーグ東地区の相手チームとして再三にわたって辛酸を舐めさせられていた。長らくヤンキースの編成トップに君臨し続けるキャッシュマンGMも、その能力を高く評価しており「いつかはマドンに」という願望を強め、その機会を伺っている。仮にマドン監督を再来年から迎え入れる悲願を達成できれば、大谷にとってもヤンキースが魅力のある球団になるというプラスアルファ的な考えがキャッシュマンGMの中には膨らみつつあるようだ。

 実際に「ツー・ウェイ・プレーヤー(二刀流)」としての起用法も含め、MLBでのブレイキングを成し遂げた大谷のことを他の誰よりも知り尽くしているMLB指揮官はマドン監督を置いて他にはいない。

「そういう観点から考えてもマドン監督の“獲得”こそがヤンキースにとって大谷移籍を加速化させる最大の近道。このように説く声は、NYメディアをはじめヤンキース周辺でも少なくない」とBBWAA(全米野球記者協会)に所属する現地ビートライターの1人は明かす。