「毎朝、定時に出勤する」というのではない働き方を、中国の若者が求め始めている。ビジネス街近くの出勤風景(2019年に広州市内で筆者撮影)

きびしい競争に疲れた中国の若者の間で「寝そべり主義」という言葉が急速に広まった。その背景にあるのは「灵活就业」(柔軟な就業、フレキシブルワーク)だ。多様化している若者の働き方の最新動向を、中国在住の加藤勇樹氏が解説する。(JBpress)

(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)

急速に広がる「寝そべり主義」

 この2カ月間で中国中に急拡大した言葉があります。それが「躺平」(タンピン)です。直訳すると「寝そべり主義」。2021年5月に匿名の若いネットユーザーが投稿したものがきっかけです。

「社会全体の競争は激化しつつあり、結婚や不動産購入に対する周囲や親世代の圧力は厳しくなるだけだ。労働や消費活動をはじめとする社会活動への参加は無意味であり、家庭を持つことや会社内での出世も虚しいだけ。最低限の暮らしを行うことで、この社会への抵抗を示そう」

「寝そべり主義」という言葉から受ける語感に比べ、かなり強烈な内容といえるでしょう。

 これまでも「仏系」(足るを知る生活、欲をあまり持たない)という生き方がネットでは語られていました。しかし、これほど多くの人々に急速に知れ渡った「躺平」の拡散スピードは驚異的です。

「躺平」の象徴としてネットなどでよく使用される画像。作成者や出どころは不明