なぜ経営層はテレワークを拒むのか

 経営層はなぜテレワークの導入・継続を拒むのだろうか。

 Dropbox Japanの調査では、社員と経営層のテレワークに対する考え方の差が浮き彫りになっている。

 調査ではテレワークの効果について、長時間労働の是正(32.8%)やワークライフバランス(31.7%)などの項目でメリットがあるとの回答が得られた一方で、経営者~部長クラスの48.9%は「テレワークのメリットを感じていない」と回答している。

 また、企業のDXの遅れもテレワークの導入・継続が阻害される要因となっている。

 同調査では、テレワーク実施上の困りごととして、「会社に置いてある紙の書類の確認」「社外のネットワークに接続しないと確認できない資料・書類の確認」「稟議書等の確認・押印」などの回答が得られている。

出所:Dropbox Japan

 テレワークにおける書類の取扱いを円滑にするためには、クラウドストレージサービスへの移行、リーガルテックを活用した契約書作成・押印のデジタル化など、社内のDXへの取り組みが必要になる。

 また、テレワーク下では社員の評価体制も大きな課題となることがある。テレワークにおいては純粋な労働時間を算出することが難しくなるため、時間管理や評価基準の見直しが迫られることになるのだ。

 先述のパーソル研究所の第四回調査によると、3割前後の社員が上司・同僚からの評価、サボっていると思われていないかなどを気にしている。この結果は「所定の時間内に働いていることが重要だ」という旧来の労働観を反映したもと言えるだろう。

 日本では長らく終身雇用・年功序列を前提とした「メンバーシップ型」雇用が採用されてきた。そのため、客観的な成果や業務効率性よりも仕事へのコミット量が評価の基準となることが指摘されている。

 今後テレワーク下で公平な評価制度を確立するためには、労働時間などのコミット量を評価するメンバーシップ型雇用から脱却し、成果主義的な評価制度を伴う「ジョブ型」雇用にシフトしていく必要があるだろう。