DXとは何か ―どうすればうまくいくか―

坂村健氏が語る、今すべきことと日本の未来

坂村 健(INIAD学部長)/2021.5.28

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※本コンテンツは、2021年3月16日に開催されたJBpress主催「第8回 DXフォーラム」Day1の基調講演「DXとは何か ―どうすればうまくいくか―」の内容を採録したものです。

INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長
坂村 健氏

少しのプログラミングですごいことができる時代

 コンピュータ科学者で、INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長、東京大学名誉教授、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長である坂村健氏。この日の基調講演では、DXの基本から日本における課題までを丁寧に解説した。

 そもそもDXとは「Digital Transformation」の略称。英語圏では「Trans」を省略する際にXと表記することが多いため、広く「DX」と呼称される。意味としては「デジタル技術による根本的な変革(イノベーション)」あるいは「環境や戦略面も含め業務プロセス全体を長期的な視野でデジタル化により変革していく取り組み」を指す。

「DXの目的は第一に効率化です。特に少子高齢により社会コストの効率化が求められる日本では、質の向上と低コスト化の両立で持続可能性を生み出していく必要があります。その唯一の解がDXです。さらには働き方改革だけでなく、女性・高齢者・障害者の社会参加のための環境整備において、格差解消には、ICT利用やテレワーク、クラウドソーシングが有効であり、ビジネス効率化以外にもDXは必要とされています」

 ここで重要なのは、DXの文脈においては「(旧来用いられていた日本式の)カイゼンではなく『根本的な変革=イノベーション』に重きが置かれている」という点だ。そのため「データ転記作業などの既存業務の自動化を進めただけのRPAはDXに当たらない」と、坂村氏は強調する。

「コールセンターでの受け付けから作業者の予定まで業務に関連する全てのデータにアクセスできるプラットフォームが構築され、作業が自動的に仕分けされ、必要なデータが作業者のモバイルアプリに送られ、現場訪問のスケジュールが自動生成される。局所最適ではなく、全体最適を考えてシステムを根本から変えることが、DXの出発点です」

 日本にはIT人材不足という課題もあるが、坂村氏は「組織の問題が分かるのは、その組織に従事している人。だからこそ自社開発できることがベスト」と話し、こう続ける。

「何から何まで外部のSIerに“丸投げ”するのは望ましくありません。望ましいのは情報部門でなくても自分の仕事に組織の全データを活かし、アジャイルなシステム開発で業務効率化を日々行えるようになること。そのためには部署を越えて会社のデータが集約されるオープンなプラットフォームが必要。それこそがDXで実現できます」

 昨今はアジャイル型開発の進展、オープンソースの充実、強力なスクリプト言語の普及(Python、JavaScript)、開発環境の進歩(Jupyter Notebook、Google Colaboratory)、オープンAPIやクラウドの充実などの変化もあり、「少しのプログラミング力があれば、誰でもすごいことができる時代」と坂村氏。「チャレンジが容易かつローリスク」「イノベーションが生まれる可能性が増大している」と話した。