パイナップルの支援は求めるが福島県などの農産品禁輸はいつまでも解かず

 日本の多くのメディアも、「日本が困った台湾を救う目線」で報道していたが、『日本経済新聞』(3月18日付)は、中村裕台北特派員が「台湾のしたたかさ 中国パイナップル輸入禁止を逆手に」と題した冷静な記事を掲載した。全文は以下の通りだ。

<中国が3月から台湾産パイナップルの輸入を全面的に停止したことに台湾が強く反発している。害虫を理由にした中国に対し、「言いがかりで、政治的圧力だ」と主張。「中国には屈しない」と、一気に買い支えのムードを作りあげた。日本など海外にも支援の輪が広がり、友好ムードも醸成されたが、台湾の一連の動きには違和感も覚える。

 中国当局が2月26日、台湾産パイナップルの輸入停止を発表すると、蔡英文総統の動きは早かった。すぐに台湾南部の産地に乗り込み、畑の中でパイナップルを持ち上げ「農家の皆さん安心してください。政府が支えます」とパフォーマンスを繰り返した。「中国にいじめられ、それに負けない台湾」。その分かりやすい構図は大衆の心をつかんだ。日本でも大手が大量購入の動きをみせ、既に昨年の中国向け輸出を上回る購入予約が決まったという。

「日本のみなさん、ありがとうございます!」。蔡総統のツイッターには日本語でこう書き込まれ、日台友好の証しだと関係者も胸を張った。だがこうした世論や風潮は、印象操作も手伝って作られた感も拭えない。

 台湾の農業委員会(農水省)によると、昨年の台湾のパイナップル生産量は40万トン強。大半の9割は台湾で消費された。残りの1割だけが輸出され、そのうちの9割を中国が占めたという話だ。額にして50億円強にすぎないが、「輸出の9割が中国向け」ばかりが強調された結果、大ごとだと誤解した人が少なくない。

 だが事実は違う。昨年、台湾からの中国向け輸出は総額で過去最高の1514億ドル(約16兆5千億円)。中国依存が鮮明で、そのうちパイナップルの割合はわずか0.03%だ。それでも蔡総統はじめ政権幹部が台湾の窮地のごとく宣伝する背景には、南部の農家に政権与党・民進党支持者が多いことと無縁ではない。

 中国が「台湾こそ政治利用している」というのもそのためだ。さらに台湾は、パイナップルは今や日台友好の証しだとも強調する。だがその裏では、東日本大震災からの10年間、福島県をはじめ茨城県など周辺5県の農産品を「核食」と呼び続け、輸入を全面禁止にしてきた。世界でも台湾と中国だけの措置だが、こうした問題には台湾は沈黙する。

「核食」問題に触れれば、市民の反感を買い、蔡総統も政権運営が危ういと思うためだ。12日の国会でもパイナップルへの対応で追い風に乗る政権側は「(5県産の輸入解禁の)議論は全くしていない」と、野党側からの質問を一蹴した。

 決して美しい話で終わらないパイナップル問題。少し冷静な視点も必要だ>

 以上である。私は昨年1月の台湾総統選挙で、1週間近く台北の蔡英文民進党を取材したが、彼らはわれわれ日本人が考えているよりも、はるかにしたたかな存在である。日本に対して何をすればどんな反応が返ってくるかを、冷静沈着に分析しながら行動している。