まるで「濃厚接触推奨」のような行為

 現在の日本は新型コロナウイルス感染拡大の「第4波」に襲われ、東京をはじめとする10都道府県に緊急事態宣言が発出されている。このうち9都道府県は、5月31日の期限を6月20日までに延長したばかりだ。そこでは、人との接触を避けることが優先され、「3密」の回避や人流の停止が呼びかけられている。それを「ご自由にお使いください」とばかりに選手村でコンドームを無料配布することは、いうなれば“究極の濃厚接触”を推奨しているようなものだ。

 まして、東京都などの飲食店では時短営業どころか、酒類の提供すら自粛を求められている。路上呑みも事実上の禁止。それだけ、アルコールが入ると、わかっていても節操を見失いがちだからだ。飲酒運転が無くならないことからも説明はつく。それを、選手は違う、という根拠はどこにもない。希望的観測に過ぎない。むしろ節度がないことは、コンドームの配布の理由が示すとおりだ。

 もっとも、選手はワクチンも接種していて、毎日PCR検査も受ける。市中とも隔絶される。だから、感染リスクはほとんどなく、それこそ「安心・安全」な人々の集まりなのだから、お互いに交わっても支障はない、というのであれば事情も変わってくる。かえって、酒池肉林の空間と化しても不思議はない。

 そんな選手、関係者のために、これまで以上の医療体制を整えなければならない。それも感染拡大に苦しむ東京と首都圏を舞台にして。まだ先のこととは言え、そこに異様な不快感を覚えるのは、どこか一般市民とオリンピック参加者とを隔てる選民思想に似たものを感じとるからだろう。オリンピック憲章の平等の精神にも値しない。