宣言延長の繰り返しは希望的観測に基づく対症療法の証

 希望的観測は、日本が戦争に負けた要因のひとつだ。

 28日に再延長が決まった3回目の緊急事態宣言は、そもそも4月25日から5月11日まで東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に発出されたものだった。菅首相は、その時の会見で大型連休中の「短期集中」を強調していたはずだった。ところが、その目論見はまんまと失敗。5月7日には、愛知と福岡を加えて、期限を31日まで延長することを決めた。その時の会見で菅首相は、こう述べていた。

「また緊急事態宣言の延長かと失望される方も多いかと思います。しかし、私たちは必ず近い将来、この局面を乗り越えていきます」

 そして、その期間中に北海道、広島、岡山、福岡、沖縄を加えて、28日に再度の延長決定している。失望もいいところだ。

 もうここまでくれば、具体的な根拠や分析もないまま期限を区切り、うまくいかなければ頭を下げて延長の繰り返しで、希望的観測を前提としての対症療法としか思えない。そうすると、6月20日の期限で宣言が解除されることも疑わしい。むしろ、「英国型」の変異株によって、ここまで感染が拡大したように、いまではさらに感染力の強い「インド型」の市中感染が認められている。さらに延長ともなれば、緊急事態宣言下でも東京オリンピックに突き進む可能性は否定できない。

 IOC(国際オリンピック委員会)のジョン・コーツ副会長は、5月21日の記者会見で、報道陣からの「開催期間中に緊急事態宣言が発令された場合に、大会は開催されるのか」との質問に、「答えはイエスだ」と断言している。