下手な場所に下手な刃物を2センチ突き立てたら、取り返しのつかないことになる。けっこうリスキーなタスクをプロである医師は慎重に行うことが求められている。

 そして、その疲れがモロに出たのが今回の事故と言えるでしょう。

 五條市の当該事故の場合、接種を担当していた医師は、こうした「表面解剖」などは慎重にしていたのだと思います。

 80人の高齢者に2人の医師というのですから、単純計算すれば40人。これを仮に2時間で捌くとすれば、1人にかけられる時間は3分、ほとんど工場なみの流れ作業で進めていかねばなりません。

 しかし、注射器そのもののチェックは、流れ作業の中で、お留守になっていたことが短い報道内容から露骨に垣間見えています。

「後の祭り」では遅すぎる

 五條市の事故について、複数の報道を参考にまとめてみると、以下のような経緯であったらしい。調べていて、こういう流れを、既存のメディアでは追いにくいのは難点と思いました。

●使用済みの注射器は、本来、使用前に付いていたキャップを付けずに青いトレーに置くはずであった(そういう決まりに五條市のローカルルールで決めていたらしいことが分かるくだりです)。

●使用前のキャップを使用後つけないのは、一度使った注射器を二度と取り違えないよう、マニュアル的に定められた必須の安全措置であった。

●しかし、この医師は、片付けをする看護師などが針に触れたりしたら大変ですから、
怪我をしたり、間違いのないようキャップをつけて、しかもご丁寧に使用前の注射器と同じトレーに戻したらしい。

 これがいけません。