日本でもいよいよワクチン接種が本格化しているが、接種手順がいい加減なケースが出て来た

 5月12日、奈良県生駒市の生駒市立病院は、4月28日に実施した新型コロナウイルスのワクチン接種で、誤って「1人だけ生理食塩水」を接種したと発表しました。

「生理食塩水を接種しても、害はないから・・・」と病院側は説明していますが、報道されるこの「接種事故」は、不可解で理解できません。

 多くのメディアはあまり深く考えることなく、記者発表資料をそのまま報道している様子ですが、ちょっと待ってください。根本的に何かおかしい。

 そう気づかせてくれたのは、実名を挙げて問題ないと思いますので書いてしまうと、素粒子理論の野尻美保子さん(高エネルギー加速器研究機構)とのネット上の会話でした。

食塩水だけ入った注射器?

 まず報道された内容を見てみましょう。

 生駒の病院では院内の「講堂・交流センター」で4月28日午後2~4時にかけて、85歳以上の高齢者39人と医療関係者15人、合わせて54人を対象に新型コロナウイルスワクチンが接種されました。

 ワクチンはファイザー社製品が用いられ、ガラス容器ごと低温貯蔵されていたものを解凍、これを生理食塩水で薄めて「からの」注射器に詰める手順。

 ガラス容器は「バイアル」と呼ばれ、水で薄めるとバイアル1個あたり「6回接種分」の「水割りワクチン」ができます。

 この「水割り」にしてしまうと、保管が利かないので当日キャンセルすると「ワクチンを捨てなければならなくなった」などという話になってくるのは、すでに報道されご存じの方も多いでしょう。

 この日は9個のバイアルが準備されていたので 9×6=54人分、上に記したように高齢者39+メディカル15人の54人が接種を受けたわけです。

 報道内容で理解し難かったのは、「途中で未使用のバイアルが1つ残っているのを女性看護師が発見」し、注射器を確認すると「生理食塩水だけが入った注射器が6本見つかった」という点です。

 これは一体どういうことか?