池江の「奇跡の復活」を利用したがる人々の“嫌な感じ”
ここ最近、組織委や五輪関係者の間には異様なほどの焦燥感が漂っているのではないか――。この武藤事務総長の会見を聞いたメディア関係者、そして組織委周辺からもこうした指摘が溢れ出て止まらない。
つい先日もその焦りが生み出す、非常にみっともない内情を耳にした。
競泳の東京五輪代表選考会を兼ねる日本選手権第2日(4日・東京アクアティクスセンター)で、白血病からの完全復活を目指す池江璃花子が女子100メートルバタフライを57秒77で優勝。400メートルメドレーリレーの派遣標準記録を突破して東京五輪出場を決めた。
日本中に勇気と感動を与えた奇跡の復活劇には誰もが心の底から称賛と拍手を送ったはずである。
だが、新型コロナウイルスの感染拡大と「森前会長辞任」「開会式ブタ演出案」など組織委の度重なる不祥事ぼっ発で世間から開催反対のムードが一向に沈静化しない中、五輪関係者の間で「池江の五輪出場権獲得を支持率回復の起爆剤にしようとする動きが出ている」という話を聞いた時には開いた口が塞がらなかった。
組織委内部で“開催強硬派”と目される人物は池江が五輪出場権を勝ち取った直後、競泳日本選手権が行われた会場で複数のメディア関係者に鼻息を荒げながら次のような本音をポロリと漏らしている。
「我々としては五輪の主役であるアスリートが脚光を浴びてくれれば、この逆風は間違いなく乗り越えられると前から考えていた。そのタイミングで見事に優勝してくれたのが、池江選手。大病を克服し、代表権獲得でミラクルを成し遂げた池江選手の涙に共感しない国民などいるはずがない。彼女が東京五輪のヒロインになってくれれば、もう開催に文句を言う声など自然に収まっていくはず。池江選手にはいい意味で広告塔になってもらい、今後は東京五輪開催の救世主としても思う存分奮闘してほしいと考えていますよ」
組織委、そして日本オリンピック委員会(JOC)の中からも「池江さんの優勝に『これで東京五輪は救われた』と思わず万歳三唱する関係者が数多くいたほど」「早速、広告代理店や複数クライアントと連動して池江のCM起用プランを急ピッチで始動させ、彼女の人気を爆発させて東京五輪への風向きを一気に変えてしまおうと画策する声も出た」などと大ハシャギする様子が複数の関係者を通じて伝わって来ている。政府関係者や五輪開催に前のめりになる政治家からも池江の優勝をSNSでことさら強調するように大喜びするコメントも散見された。
こうした一連の動きに対し“いやらしさ”を感じるのは多くの人も同じ思いではないか。
池江のミラクルを素直に喜ぶだけならいいが、彼女の注目度と人気を東京五輪開催の起爆剤として利用しようという姑息な考えにはまったく同意できないし、強烈な違和感を覚える。逆に言えば、池江人気に頼らざるを得ないところにやはり組織委や大会関係者の中に強い焦りがあるのだろう。