勝因の一つは野党候補の一本化

 韓国の政治情勢を見ると、現在の与党「共に民主党」は左派、野党の「国民の力」は右派という位置づけであり、これに中道野党の「国民の党」が加わっている形だ。ただ、ソウル市長選では、当初は「国民の党」の党首・安哲秀(アン・チョルス)氏が立候補の検討していた。安氏も文政権に対する批判を常々展開してきており、今回の市長選で勝利し来年の大統領選挙への起爆剤としたい考えだった。

 しかし、市長選告示直前に、「野党が勝つことが重要」として自身は立候補せず、「国民の力」の呉氏を支持することを表明し、野党候補は一本化された。このことがさらに呉氏への追い風になったことも挙げられる。また、韓国における中道支持、無党派層は20〜30代の若年層が中心とされているが、ソウルでは投票権がある18歳以上の10代を含め、20代、30代の55%以上が野党の呉氏に投票したという結果も出た。

 釜山市に住む40代の女性は投票を前に、中学生の娘から「左派には絶対投票しないで。自分の家族を不正で大学に入れさせるなんて、真面目に頑張っている人もたくさんいるのに許せない」と言われたという。あくまでこれは親子間での他愛もない話の一部ではあるが、10代までもが今や与党、つまり左派に対する不信や嫌悪感を持っているということが感じられる。

 特に就職難や不動産高騰問題など若年層にとって生活を脅かすような問題が相次いでいることに加え、文政権での不正に対するフラストレーションの高まりが、文大統領への強い反感となって今回の市長選挙にもはっきりと現れたといえる。

 また、これまで文政権の支持基盤を支えてきたと言われていた40代以上についても今回の市長選では与党と野党支持がほぼ二分される形となった。40代以上から聞かれた声も「給料は満足に上がらずに税金はどんどん上げられる」と生活が苦しくなっていくことへの不満であった。

 国民の厳しい判定をつきつけられた文政権。残りの任期をどのように切り抜け、さらに来年の大統領選挙をどう戦っていくのか。文大統領の苦難はさらに続くことになるであろう。