4月2日、ソウル市長選の期日前投票を行う文在寅大統領と金正淑夫人(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 韓国の政権与党「共に民主党」が連日、国民に向けた謝罪文を発表している。目前に迫った選挙のために、いわゆる「泣き落とし戦略」に突入したのだ。

 3月31日、選挙対策委員長を務める李洛淵(イ・ナギョン)元首相が緊急記者会見を自ら要望し、「無限の責任を感じており、国民の皆さんにお詫び申し上げします」と国民へ謝罪したが、翌日にも党代表職務代行の金太年(キム・テニョン)議員が再び国民への謝罪文を発表し、「原因がどうであれ、我々が至らなかった」「もう一度チャンスを与えてほしい」と、腰を90度に折り曲げて頭を下げてみせた。

「失政は朴槿恵前政権のせい」

 文在寅(ムン・ジェイン)政権と与党は最近まで、政権への批判が起こるたびに、「李明博(イ・ミョンバク)政権、朴槿恵(パク・クネ)政権のせいだ」「保守メディアのせいだ」と、一貫して責任転嫁の姿勢をとってきた。特に日々高騰する住宅価格に関して、文政権の不動産“失政”が指摘されると、必ずと言っていいほど朴槿恵政権の政策のせいにしてきた。つまり、朴槿恵政権が景気てこ入れのために「借金をしてでも住宅を」とばかりに、住宅売買関連税金を緩和し、銀行融資の上限線を大幅に増やしたために現在の不動産バブルが起きた、と主張してきたのだ。さらに朴政権時代には、ソウルをはじめとする首都圏の再建築などの住宅供給事業が少なかったことも指摘した。

 確かにそれらは不動産価格高騰の一因かもしれないが、文政権や与党の人々は、朴政権当時、野党だった民主党や朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が再建築マンション事業やグリーンベルト(開発制限地域)解除に強く反対した事実はきれいさっぱり忘れてしまっているようだ。そのため彼らは、臆面もなく「文政権の不動産政策は決して失敗していない。現在の状況は朴槿恵政権の経済政策の副作用のせいだ」という論理を展開してくることができたのだろう。