ソウル市長選に勝利した野党の呉世勲氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

 4月7日、文在寅政権と与党の先行きを占う存在として注目を浴びたソウルと釜山の市長選挙が決戦の日を迎えた。結果はソウル、釜山共に野党の圧勝劇。文政権への不信感が高まる中、選挙に対する国民の関心も高い選挙戦となった。文政権の今後の政権運営、そして来年の大統領選挙をも左右すると言われた今回の選挙を振り返る。

 ソウル市長選には、計12人が立候補したが、与党「共に民主党」所属で元MBCの女性アナウンサーだった朴映宣(パク・ヨンソン)氏と、野党「国民の力」所属の呉世勲(オ・セフン)氏の事実上の一騎打ちとなった。4月1日の世論調査では、呉氏の支持率が57.5%だったのに対し、朴氏は36.0%と呉氏が大きくリード。一方の釜山市長選挙においても野党候補が優位に立ち、与党側の焦りはさらに色濃くなっていた。

 ソウル市長選挙は、2020年の朴元淳(パク・ウォンジュン)ソウル前市長のセクハラスキャンダルが引き金である。セクハラスキャンダルによって朴前市長が自殺、国民に衝撃を与えたのは記憶に新しい。

 ソウルは文在寅政権の影響を強く受けた地域である。文政権に次々と湧き上がる疑惑により国民の不信感は募る一方、特にソウルとその周辺地域では文政権下で過去に例を見ない不動産価格の高騰が続き、子育てやシングルの若年層には住宅の確保は死活問題となった。加えて、最近になって韓国土地住宅公社(LH)の職員による不正不動産投機疑惑が浮上、ソウルでは職員から逮捕者や自殺者を出している。この疑惑では、文大統領側近や文大統領自身にも疑惑の目が向けられた。

 2021年の大統領選挙の前哨戦とも目される2大都市の市長選挙公示前に疑惑が表面化したことは、スキャンダル続きだった文政権に追い打ちをかける形となった。文政権の支持率は3月22日に35%と政権発足後最低を記録。4月1日の調査ではさらに下落し32%にまで落ち込んでいた。文政権にとっては、まさに瀬戸際の崖っぷちに追い込まれた状態で迎えた市長選挙だったのだ。